【株式会社トークナビ】
樋田かおり社長インタビュー

樋田かおり社長の子ども時代について教えてください。

引っ込み思案で、クラスでも目立たない存在でした。小学校では班長すらやったことがなく、学級委員なんてとんでもない…。国語の本読みで当てられても、誰にも聞こえないくらい小さな声しか出せませんでした。

変わったきっかけは、高校時代の放送部です。スポーツの強豪校として知られる高校で、部活で日本一を目指す同級生がたくさんいました。私は放送部員として高校野球のウグイス嬢を務めたことで、”声で伝える”ことの面白さに目覚めました。まるで自分自身が楽器になったような感覚でした。

そこからは、”声の甲子園”と言われる全国高校放送コンテストを目指す部活漬けの日々。3年生のとき県大会で優勝したことでアナウンサーになる夢を持ち、大学卒業後、日本テレビ系列青森放送のアナウンサーになりました。

地方局アナウンサー時代のご経験を教えてください。

青森放送はテレビ・ラジオの両方を持つ放送局で、夕方のニュース番組からバラエティ、ラジオの7時間生放送などを経験しました。地方局のアナウンサーは原稿を読むだけではなく、ゲストにインタビューをしたり、ラジオ番組の企画をしたり、お天気コーナーの原稿を書いたりもします。放送現場は秒単位で動くため、時間を意識する感覚が体にしみこんでおり、今もそれが活かされていると感じています。

創業された経緯を教えてください。

会社設立のきっかけは、局アナを辞めて再就職先を探していた頃、結婚や出産で離職後、仕事復帰を望んでいる 女性アナウンサー が多いと知ったことです。時間が不規則で、番組を持つと休めないアナウンサーの仕事は子育てをしながら務めるのは難しく、30歳を超えるとキャリアが止まってしまうという課題がありました。

私自身も局アナ時代にこのような「30歳限界説」を感じることが多く、女性アナウンサーのセカンドキャリアを支援したいと考えたことが起業の動機でした。

設立当初は人脈も実績もありません。そこで、さまざまなセミナーや研修に顔を出して研修講師のノウハウを学び、アナウンサー仲間たちと話し方の研修事業を始めました。当時、周囲からは「そんな若手に講師は務まらない」と言われましたが、「仕事がないなら創るしかない」と必死でした。

社名やビジョンに込めた想いと具体的に取り組まれている事を教えてください。

トークナビという社名はトークをナビゲーションする（導く）という意味です。子ども時代に話下手だった私自身の経験から、話し方は才能ではなく、誰でも学び次第で身につけられると信じています。そこで、人の話す力を向上させることで社会貢献したいと考え、名付けました。

ビジョンには「声で、未来を変える」を掲げています。創業当初から行っている話し方の研修事業のほか、アナウンサーが中小企業の顔となり広報を代行する「女子アナ広報室」、企業イベントなどの運営や司会を務める「女子アナ司会部」など”伝えること”を軸に事業を展開しています。

「女子アナ広報室」を立ち上げたきっかけは、研修を提供したお客様企業からの声でした。話し方の上達した経営者の方から「メディアに出演したい」「広報に力を入れたいが手が回らない」と聞き、アナウンサーの取材力や伝える力を活かせるのではと考えました。

トークナビにたくさん集まる地方局アナウンサーは番組の企画や取材も行ってきた経験があり、まさに強みを活かせるサービスとなりました。また、在宅で仕事ができる体制を整えたことで、「働きたいけど働けない」と悩む地方の”潜在アナウンサー”が活躍できる場も創り出しました。

株式会社トークナビを運営される上で大切にされていることを教えてください。

1人ひとりの強みを生かすことです。「マイクを持って話すこと」だけがアナウンサーの仕事だけではありません。トークナビには研修事業、広報事業、司会事業があり、アナウンサーの経験を活かしつつ複数の仕事に挑戦することができます。その人の強みや志向性、働き方の希望などをすり合わせ、1人ひとりに合った仕事や働き方を提案しています。

この考えは、トークナビのロゴにも反映されています。トークナビのロゴはさまざまなカラーが組み合わさり、 1 つの球体（地球）ができあがっています。 1 人ひとりの 個性をつなげることで社会に貢献していきたいという想いが込められています。

この記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。

女性アナウンサーに限らず、ライフイベントを経てキャリアに悩む女性は多いと思います。そんな時はつい目の前のことで悩んでしまいがちですが、「逆算思考で」と伝えたいです。

私自身も独立してフリーになったとき、目の前のスケジュールが埋まらない不安でいっぱいで、オーディションの機会を待ち続け、受けては落ち込む日々でした。でも、自分が40代になっても50代になってもアナウンサーとして生き続けられるためには今どうしたらよいか？と考えたことで、自分自身を変化させ、今の仕事にたどり着きました。

自分がやりたいことだけにこだわるのではなく、社会に求められる仕事に対して、自分が変化していけると良いと思っています。